シンスプリント予防について
シンスプリントの傷害予防:中枢へのアプローチ
シンスプリントは、主にスポーツ選手(特に学生アスリート)や運動愛好者(ランナー)に多く見られる障害で、すねの内側に痛みが生じる症状です。これは繰り返しの負荷が原因で、筋肉や骨膜にストレスがかかることによって発症すると言われています。しかし、痛みのある患部(末梢)だけが問題ではなく、その背後には「中枢」の課題も考慮すべきという話が今回の内容です。
シンスプリントの原因:末梢だけではない「中枢」の影響
シンスプリントの一般的な原因として、以下が挙げられます:
- オーバーユース(使いすぎ)
- 筋肉の硬さや筋力低下(下腿三頭筋や後脛骨筋など)
- 不適切なシューズや硬い地面
- 足のアライメント(形態的な歪み)異常
しかし、痛みの直接的な原因(患部の炎症や微細な損傷)を解消するだけでは不十分なことが多い一方で、痛みへのアプローチとしては正解かと思います。炎症を抑える、または発痛物質への対処として医師による処方箋が出た消炎鎮痛薬や痛み止め薬、または柔道整復師や理学療法士などセラピストによる徒手療法、そして温冷刺激、電気刺激などの物理療法も、患部へのアプローチとして対処されることが多い内容です。実際、そうしたアプローチにより、痛みの緩和に繋がります。
ただ、それだけでなく、ここで注目すべきなのは「中枢の課題」です。
中枢の課題とは何か?
中枢とは、神経系や脳、体全体の運動制御を指します。身体の痛みや障害は、単に患部の問題だけでなく、中枢神経系の運動制御不全が引き起こしている可能性があります。例えば:
- 動作のクセや運動パターンの問題
- 走り方や歩行時のフォームが不適切だと、局所に過剰な負荷がかかり続けます。
- 姿勢や体幹の安定性不足
- 体幹(コア)が不安定な状態では、脚部に余計な負担が集中しやすくなります。
- 中枢神経のフィードバック不足
- 感覚情報の処理や適切な運動反応がうまく行われないと、同じ部位にストレスがかかり続けてしまいます。
以上のように記載すると、いかにも小難しい話に感じてしまうかもしれませんが、至ってシンプルな話で、簡単に言うと「動かし方が下手なら痛めやすいのでは?」っと言い換えることができます。運動初心者は、動きが雑で、無駄な動きが多く、疲れやすいし、変なところが痛みやすかったりする、そんな経験、または見聞きしませんか?力まなくていい部位に力が入っているうちは、滑らかな動きはできませんし、疲れやすいというのは容易に想像できると思います。
動きが下手から、上手になるということは、多数の筋肉の協調運動がスムーズになってきた証でもあり、その協調運動を円滑にするのは中枢神経系の役割だ!と聞くと、納得いきやすい話かと思います。話を戻して、その中枢に課題があると想像した時に、末梢への影響は・・・・ありそうですよね?
「原因の原因」という考え方
痛みや障害の「直接的な原因」だけを取り除いても、根本的な解決にはなりません。「原因の原因」を探り、そこに対してアプローチすることが必要です。
例えば、
- シンスプリントの痛み → 原因は過度な運動やフォーム不良
- その原因の背景には、姿勢制御や協調運動の不備(中枢の問題)が隠れている
こうした「原因の原因」へのアプローチこそが、再発予防や根本改善につながるのでは?という考え方が、予防の考え方です。
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーの役割
「日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)」は、傷害予防やコンディショニング、リコンディショニングの専門家です。我々は単に痛みだけに注目するのではなく、以下の点を重視して介入します:
- 中枢と末梢の両面から原因を評価
- 適切な動作指導やフォーム改善
- 体幹トレーニングや動作パターンの再教育
例えば、シンスプリントの治療では、単に患部のアイシングやストレッチだけでなく、体幹トレーニングや姿勢改善、神経筋制御のエクササイズを取り入れることで再発防止を図ります。体幹トレーニングというと、雑な表現かもしれませんが、手脚を末梢、それ以外の胴体部分を体幹としたら、体幹は中枢とも言えますよね。そう考えると、末梢(四肢)の課題に対して中枢(体幹)という考え方も自然と浮かんでくるものです。注意したいことは、中枢が最大の原因だ!と決めつけたいのではなく、末梢も中枢も両面から丁寧に分析していくと良いですね!ってことです。どっちが大事ということでなく、「どちらも大事」です。
まとめ:中枢と末梢のバランスを考えた傷害予防
シンスプリントのような障害は、患部だけでなく「中枢の課題」にも目を向けることが大切です。「原因の原因」という深い視点、または普段と異なる視点から問題を捉え、動作や姿勢、神経制御の改善に取り組むことで、根本的な解決と再発予防が可能になる・・・・のではないでしょうか?少なくとも私はそう考えております。
JSPOATは、その専門的知識と技術で、スポーツ愛好者や選手が痛みなく運動を続けられるようサポートしていくことが使命です。治療家ではなく、運動指導者であるJSPOATとしての専門性とは、今回紹介したような、通常とは異なる多角的視点を持ってアプローチする点ではないだろうかと考えます。
この視点を取り入れてみると、シンスプリントに対する捉え方に変化が生じていくのかもしれませんよ!
最後までお読みいただきありがとうございました。
また色々と投稿していくので、引き続きご覧いただけましたら幸いです。
JSPOAT(予防の専門家) 小野勇太