冬季におけるスポーツ選手のコンディショニング
自律神経と神経伝導速度の影響
寒い冬は、スポーツ選手にとってパフォーマンスの維持と体調管理が特に重要な季節です。適度な運動は免疫力を上げるとされていますが、過度な運動はかえって免疫力を一時的に下げてしまい、その間に体を冷やしたままだったり、常在菌やウイルスに抵抗力で負けてしまって体調不良なんてことは、よくあります。一生懸命にスポーツに励む人ほど風邪を引きやすいかもしれないのです!(※昨今の筋トレブームにより、激しいトレーニングを行っている人にも同様なことが言えるかもしれません)
気温の低下に伴い、体調不良を引き起こしやすい要因が増えるため、適切な対策が必要です。以下では、冬季における寒さが体に及ぼす影響と、コンディショニングのポイントを解説します。
寒さが引き起こす主な影響
冬季の寒冷環境は、体内のさまざまな機能に影響を与えます。
- 自律神経の乱れ
冬の寒さにさらされると、体温を保つため交感神経が優位になりやすく、自律神経が乱れることがあります。これにより、以下の症状が起きやすくなります:- 血管収縮による冷えや血流低下
- 消化機能の低下
- 免疫力の低下
- 神経伝導速度の低下
冷たい環境では神経の伝導速度が遅くなるため、筋肉の反応や動きのキレが低下することがあります。これにより、スポーツ中のパフォーマンスが低下し、ケガのリスクも増加します。余談ですが、高齢者の方々や日頃運動不足の方は、この時期の寒さによって筋肉に命令をする神経伝導速度の低下によって、身体がいつもより上手く機能せずに、転倒しやすかったり、何らかのケガにつながりやすいかも!?って考えてもおかしくはないので、要注意な時期であることを補足しておきますね。 - 脱水のリスク
冬季は寒さのために発汗を感じにくいものの、寒さにより、脳内より放出される抗利尿ホルモンが低下します。このホルモンは、利尿を抑える役割があるため「抗利尿」ホルモンなのですが、寒冷刺激によりホルモン分泌が減るとされていて、『冬季になるとトイレが近くなる』という現象が生じやすくなるのです。(経験ございませんか?寒くなって尿意が近くなる現象は、このホルモン分泌が低下していることが要因なようです)また、スポーツ選手は呼吸や運動で体内から水分がさらに失われます。冬季といえど、脱水のリスクはあるんですね。脱水により、疲労や集中力の低下、筋肉のけいれんが起こりやすくなります。夏場で言うと、これらは熱中症の「熱疲労」「熱痙攣」にあたる症状にそっくりです。つまり、冬季でも熱中症は起こりうるといえそうですね。その発生要因(暑さと寒さ)が異なるわけですが、『脱水』という状態は変わりません。身体にとって水分は、いずれにせよ必要なことなので、脱水は良くないよ!ってことですね。
スポーツ選手の体調不良を防ぐためのコンディショニング戦略
1. 体温調節を意識する
- ウォームアップを念入りに
冷えた体では筋肉や関節が硬く、パフォーマンスが低下します。動的ストレッチや軽いジョギングなどで、体を十分に温めましょう。暖かい季節のウォーミングアップと全く同じ強度や量では不適切とも言えそうです。 - 適切な防寒対策
通気性と保温性を兼ね備えたウエアを選び、特に手足や耳の冷えを防ぎます。身体が温まるまでは、初めから薄着で動き出さぬよう気をつけましょう!
2. 自律神経を整える
- 規則正しい生活
寒い冬は体調不良を防ぐために、十分な睡眠と栄養バランスを意識します。特にビタミンCやDを多く含む食品を摂取することで免疫力をサポートします。 - 温冷浴の活用
お風呂では、温冷交互浴を行うことで自律神経のバランスを整え、疲労回復を促進します。夏場と違い、「冷」を入れると寒いと感じる方は、十分に身体が温まっていないので、無理に交互浴にこだわらず、温めることだけを念頭に考えてもOKです。
3. 神経伝導速度を高めるトレーニング
- アクティブリカバリー
冬場でも適度に動き続けることで、筋肉や神経の反応を維持します。例えば、軽いランニングや体幹トレーニングが有効です。※いきなりのランニングはかえって危険なので、十分にウォーミングアップしたり、外で走る人ならばなるべく、太陽の出ている日中に行うことをお勧めします。 - クイックネスドリル
神経伝導速度を高めるため、素早い動きや反応を意識したトレーニングを取り入れることが推奨されます。このドリルも、身体が十分に温まってきてから取り入れると良いでしょう。神経伝導速度の低下が起きているであろう、身体が温まっていない段階でこのドリルを入れると、かえってケガのリスクが増します。ウォーミングアップはやはり大切です。
4. 脱水予防
- 水分補給の習慣化
喉の渇きを感じにくい冬でも、定期的に水分補給を心がけましょう。温かいスポーツドリンクやハーブティーなど、冷えを防ぎながら補給できるものがおすすめです。減量期の選手などは、糖分の入った飲料はなるべく避けることも重要です。水分補給だから何でも良いと言うわけではありませんからね!
まとめ:冬季の「寒さ」を味方にしたコンディショニングを
冬季にスポーツ選手が高いパフォーマンスを維持するためには、寒さに対する適切な備えが欠かせません。自律神経の調整や神経伝導速度の維持を意識し、体全体をケアすることで、体調不良やケガを防ぎつつ最良の状態を保つことができます。
特に、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーのサポートを受けることで、個々の選手に最適なプランを作成し、健康的で効率の良いコンディショニングが可能になります。
適切な知識と実践で、寒い冬を乗り越え、さらなる成長を目指しましょう!
JSPOAT(予防の専門家)小野勇太