捻挫と思いきや・・・

「捻挫」という言葉は、わりと一般の方々でもその言葉自体は知っている人は多い言葉ですね。

“足を捻って痛めた”、”足をくじいて捻った” などによって痛めたら、大体の人は「あっ!捻挫しちゃった!」なんて咄嗟に口から出てきたりしているのを、よく見かけます。

「捻挫」って一般用語化してますよね?

今回は、その捻挫と安易に判断してしまう一般の方々の認識に対しての注意喚起の投稿内容となります。実話の例をもとに、大切な話を綴ります。

長文になるので、先に結論から言うと、『捻挫と思ったら骨折だった』って、結構ありますよ!って話です。

特に、成長期(小学生〜中学生)のスポーツ活動中に起きる足首を捻って負傷するケガは、捻挫より骨折のケースが本当に多いです。(※AT小野の主観が入っているため、正確なデータはありませんが、経験数が多いのは事実です)

僕はこれまでアスレティックトレーナー(AT)としてスポーツ現場でも、特にバスケットボールやサッカーの現場に対応する機会が多く、その選手は主に学生(中学生〜大学生)でした。

土日は練習試合や、大会となるとそうしたイベントの帯同トレーナーとして、各スポーツ現場に足を運ぶわけですが、スポーツは、どうしても突発的な事故のようなケガの発生ゼロとはいかず、何らかのケガが起こりがちです。バスケットボールやサッカーでは、とりわけ足首のケガが多いのも特徴ですね。

とある試合イベント会場で、その日は大会全体の救護、緊急対応役としてのAT活動していた日のことです。内容は、中学バスケットボールでした。

僕はトレーナーブース(テーピングや傷害評価やストレッチなどを行うスペース)にて、会場をよく見渡せる場所にてスタンバイしていると、

「トレーナーさん!選手が “捻挫” しちゃったみたいです!ちょっと見てもらえませんか?」

っと、息を切らせながら必死に走ってきたスタッフの方からの救護要請に即座に現場に向かいます。

すると、ベンチ裏で足を抑え座り込んでいる選手を発見、その周りにはチームメイトが心配そうに集まっています。

真っ先にその選手の元へ駆け寄り、状況を確認します。

「トレーナーの小野です。ケガをしたと聞いてきました。どこを、どのように痛めたか覚えていますか?」(AT)

真っ先に聞く質問は大抵がこの内容です。そもそも、ケガであれば、そのケガ人は『意識がある』ため命の危険はおそらくないであろうことが想定されます。そうゆう意味で言うと緊急度は高くありません(意識がなく倒れている場合には一刻も早くに心肺蘇生法やAEDの使用により、一次救命処置が必要なので、緊急度が最も高い状況はこちらになります)

「今押さえてる足のところが痛いです。どんな風に痛めたかは、あまり覚えていません」(選手)

「わかりました。では、痛みについて質問です。すぐに救急車を呼んでくれ!って痛みをMAXの10としたら、今どのくらい痛みますか?」(AT)

「大体6位です。」(選手)

「なるほど、わかりました。では、痛いところを詳しく確認していきますね」(AT)

こうして、痛みのある部位を確認していくわけですが、先の情報として「捻挫した」と聞いてしまうと、その先入観から捻挫の評価をしてしまいがちです。(人間の心理として)

ですが、ここはプロとして、傷害評価は基本的な流れに沿って行います。

捻挫とは、ちなみに「骨と骨の間に起こる急激なねじれ、あるいは激しい外力による関節周辺の関節包や靭帯の損傷をいう」っと定義があります。(※南江堂 柔道整復学-理論編【改訂第5版】引用)

関節包や靱帯は骨ではありません。つまり捻挫では、骨の損傷はないとも言えるわけですね。

ですが、ここで注意せねばならないのは、その捻挫であるかどうかの判断は誰がしたの?って話です。

捻挫したと連絡してきたスタッフの方は、アシスタントコーチの方でした。

ちなみになんですが、捻挫とか骨折とか、ケガの内容を特定する行為を「診断」というのですが、これができるのは法律で決まりがあって「医師のみ」に許された行為です。

なので、捻挫かどうかの判断(診断)は、一般の方が行ってはいけないっという基本ルールがあることは補足しておきます。

では僕達ATはどうなのか?というと、もちろん僕達ATにも診断権はありません。(偉そうなこと言っている僕にも当然ありません)

しかし、スポーツ現場に常に医師が常駐するわけにはいきませんから、その『緊急性の判断や、救急対応』を迅速に的確に行う専門家として存在しています。

ケガの内容を評価して、これは即座に病院(救急)に行くべきか、慌てず一般診療で診てもらうべきかの判断をするわけです。

その中で、当然ながら骨に異常がないかどうかのチェックも行います。

※僕達ATの場合は、骨折の疑いがあるかどうか評価をして、その旨を相手に伝えます。そのどちらにせよ、ケガしたら原則として医療機関受診してもらいますが、救急なのか一般診療なのかの違いというイメージです。スポーツ現場でのケガの評価はするけど、診断は医師に任せているよ!というのが僕達ATの基本スタンスとお考えください。

「これ、右と左で感覚の違いはないですか?」(AT)

※骨損傷の有無をチェックする簡易法としてタップテスト、または振動痛チェックを行います。

「あっ、ちょっと響きます」(選手)

僕達ATはレントゲンなどの特殊検査はできない代わりに、こうしたその場でできる簡易的な徒手検査によって、ケガの大まかな内容や重症度を評価します。

その時の僕の評価は、「骨の損傷疑いあり」でした。

評価していた時の周りにいた選手や、スタッフの方々も、

「いやいや、さっきのアレで骨折はないでしょ!」的なリアクション多数。

つまり、僕にとって完全なアウェイでした。笑

骨折の疑いはありましたが、その他の合併症や、緊急度が高いものは特になかったので、一般診療にて、可能な限り早めに受診するよう伝え、その場での応急処置を済ませました。

整形外科受診後すぐに、その選手と会う機会があったので、結果を聞くと、

「骨折でした!トレーナーさんがチェックしてた、あの響いていた場所が、レントゲンで線入っていて、ヒビみたいになってました。全治6週間だそうです。大会まで、何とか間に合いそうなので、リハビリ頑張ります!」

っと前向きな選手。正確な診断を受けることによって、全治〇〇週とか、期間を知れると、やるべきことがはっきりしやすい。

なんだか腫れているし、痛みも引かないな〜、心配だから病院行ってみるか!って、受診してみたら骨折でした!ってケースは多く、骨折の場合には、相応な固定と安静期間が必要です。

※捻挫も程度によっては固定と安静が必要です

捻挫と聞くと、ほとんどの方が、

「あ〜捻挫でしょ?テーピングしてれば何とか出れるんじゃない?」

っとの反応は、すご〜く、すご〜く多く聞きますが、

ATから一言言わせて下さい。

「素人が勝手に判断するな!」

です!

捻挫かどうかの判断はもとより、ケガの程度の判断(軽症か重症か)も含めて、安易に考えるんじゃないぞ!っと注意喚起です。

捻挫という、一般用語化しているケガですが、捻挫かと思ったら骨折でした!なんて、選手からしたら洒落になりません。

補足しておきますが、捻挫でも重症なものは、全治6週超えるものもありますので、そもそも捻挫より骨折の方が酷いケガというわけでもありません。

つまり、ケガの判断は難しいんです。

捻挫か?骨折か?の2択で分類しきれない。

ケガの重症度はさらに細かく分かれます。

そんな専門的なことは一般人に判断できないですよね?

でも、大丈夫。

そんな時のために、専門家がいるので。

ATは予防の専門家です。

悪化予防のためにも、スポーツ現場にて、迅速かつ最適な対応を心がけてまいります。

引き続きよろしくお願いします!

アスレティックトレーナー(AT)小野勇太

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