AT(アスレティックトレーナー)のこれから

AT」と聞いて、アスレティックトレーナーとすぐにわかる人は、どれくらいいるだろう?

僕がAT(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー:旧日本体育協会公認アスレティックトレーナー)を目指したのは平成17年、つまり2005年。当時はATという名称は新しく、ATは普及段階の専門資格でした。資格取得の難易度も高いとの噂通り、合格できるのは一握りという狭き門だったことをよく覚えています。だからこそ、そんな狭き門を突破して、スタートラインに立ちたい!そして、ATとして活躍したいと意気込んだ当時の僕の気持ちは、今でも変わりません。

・・あれから19年が経過した今、ATという職業は社会にどのように浸透したのかを考えると、

「AT?車の話ですか?私はマニュアルで免許取りましたよ♪」

なんて、全く別の話として認知されたままで、正式名称として

「アスレティックトレーナーって知ってますか?」

こう聞いてみると、

「何それ?スポーツトレーナーのこと?」

っと、返されます。

大きくは違わないのですが、きちんと世の中に浸透していない実態はあるのではないでしょうか。(あくまでも僕の主観です。。。)

アスレティック(Athletic)には、「運動」「競技」「スポーツ」「体育」などの意味で使われる用語で、「トレーナー」を加えると、運動トレーナー、競技トレーナー、スポーツトレーナー、体育トレーナー、みたいなニュアンスになります。

一体どの意味がアスレティックトレーナー(AT)と言えるのだろうかと考えてみたときに、僕自身としては、

”そのどれもがAT(アスレティックトレーナー)ですよ”

っと言いたいです。

「運動トレーナー」とした場合、運動の幅は、それはそれは広いものです。

プロ、アマチュア、学生問わず、スポーツ選手は「運動」をしています。

また、スポーツ選手でなくとも、人々は生きていく中の生活やお仕事、外出時には必ず何らか「カラダを動かしている」事実があります。

小児から高齢者まで、生きている以上は基本的な事として、日常的に動いている、つまり「運動している」ものです。

その「運動トレーナー」という意味で言うと、ATは全ての人々にとってのトレーナーになりえます。

生きている人みんなが動いてるんですから。

運動トレーナー(AT)は何する人なの?

ATは、全ての人々の目的(体力向上したい!強くなりたい!健康維持したい!痩せたい!カラダの調子を上げたい!ある動作を上手くできるようになりたい!)達成に向けて、一人一人の特徴に合わせて運動指導をする存在です。

全ての人々というからには、さまざまな年齢、性別、基礎疾患、外傷・障害の既往歴などを網羅しておく必要があるわけですが、そこはATの資格取得の際に、基礎知識としてきちんと学びます。(ここが中々難しいので、誰でも取れる資格とはなっていない所以と言えます)

ただ、一つの分野に特化して深く深く学ぶと言うよりも、優先順位や危険度の高いことを基礎として、「広く、かつ、ちょっと深く」学んでいます。

広く浅くよりは深い、というのがミソです。雑学に長けているわけではなく、一定程度の基礎的な専門知識は保有していると思います。なので、AT有資格者の方から、SNSで見かける”とんでも理論”は少ないように思います。

その分野の道に長けた専門家には及びませんが、あらゆることを学ぶジェネラリスト的な専門家と言える、こんな風に考えます。

相手の属性に応じて、必要な指導を行う人、それがAT。

また、運動指導において、相手の健康を損ねるわけにはいきません。

相手の現在の状況が良くないのであれば、どこがどう良くないのか「評価・アセスメント」を行い、必要な医療機関へ受診を促すことも欠かせない役割です。

整形外科なのか?内科なのか?だけでも、受診先の判断を的確に行えることは、ATのサービス受給者としてのメリットと言えそうです。(「この症状、どこ受診したらいいの?」なんて声が、僕の経験上だけでも相当数あります)

時として、突然体調を崩したり、思わぬアクシデントに伴うケガの発生も、運動時には起こりえます。

どんなに準備していても、アクシデントや事故というものは完全には防ぎきれません。

そんな時には救急車を呼べばいい!っと言いたいところですが、

昨今の国内事情として、

「不必要な救急要請により、本来必要な救急要請者への救急対応の遅れが生じている」事例が報告されつつあるようです。(※嘘か誠か、Xでは医師や救急救命士による、そんな発信を見かけます)

本当に緊急性の高い状態であれば救急要請はもちろん必要です。

①意識がない(反応がない)、②普段通りの呼吸をしていない、③交通事故・落雷・水難事故など、④突然カラダを動かせなくなった、⑤猛暑の中で倒れた、などなど。

①〜③は迷わず救急要請でしょう。

④と⑤は時と場面によって異なるケースがあります。

④はいわゆるスポーツ活動中のケガ(傷害)にて生じます。

そして、⑤は熱中症です。

その場での対応により回復が見込めたり、経過観察後に、一般診療として医療機関を受診するケースもしばしばあります。

そうしたその場での評価、状況判断、初期対応をすることは、傷病者に対して最も重要な対応です。

助かる命、防げた後遺障害を、未然に防ぐ役割がそこにはあるからです。

この助かる命、防げた後遺障害、という考え方は、非常に難しいもので、後からいう「タラレバ理論」とも言えるので、あまり相手に聞く耳を持たれにくい話ではあります。

ですが、僕達ATとしては、そのタラレバ理論を、「未然に予測して、対応することが責務・使命」としてあります。そうしたところが、『予防の専門家』とも言えるのではないか?という持論を持っています。

全ての予防は完全には無理でも、「最悪のケース」を防ぐことで、命を守る、選手生命を守る、その人の人生予後を守ることに繋がる、そんな風に考えています。

運動時の「何か起きてしまう」アクシデント時の対応準備は、運動指導者として必要な心構えであり、必要な基礎能力と捉えてもいいと思います。

ATは、そうした緊急時の対応(評価・初期対応・緊急判断)を行う人材でもあります。

緊急時というのは、そんなにしょっちゅう発生するわけではないですが、いざという時は、いつ来るか分からず、そのいざって時に頼れる人が目の前にいるかどうか?が重要なのではないでしょうか?

運動にはメリット(効果)とデメリット(危険性)の両面があり、

後者を無視した結果、何か起きた時に大惨事となってからでは手遅れともなりかねない。

運動する場において、そんなデメリットを解消すべく対処できる人材がいた方が良いではないですか。

というかいないとダメでしょう!

ATはそんな場面の救世主です。医療的処置のスペシャリストは医師ではありますが、各スポーツ現場、運動指導の場全てに医師を常駐することは、現実的ではないです。医師には、本来の高度な医療を提供できる医療機関にて対応していただけるよう、運動現場で初期対応する専門家が増えていく方が上手く回ると考えます。

ATという人材を育成し、各現場にATを常駐させること、これもある意味現実的ではないのかもしれませんが、

ATが学んでいることは、非常に運動現場において必要なノウハウが詰め込まれています。

「緊急対応」が基礎知識・技能の一つとして備わっているので、より安心・安全を提供する運動指導者として、なんとか普及したい人材です。

何よりも普及したいことは、ATが学ぶ考え方として、

「予防意識」、別の表現として「リスク管理」とも言いますが、ここがもっと世に普及したいところです。

僕はATルーム O's hope ほおぷ を立ち上げて、活動していく中で、その

「予防意識(リスク管理)」という考え方、思考を、たくさんの方にインストールしてもらえるようにしていきたいと、強く願っています。何か起きてからの後悔を減らしたいです。

これが僕のHOPE・ほおぷ(願い)です。

1人でも多くの方に、この願いが届きますように。

長文を最後までお読みいただきありがとうございました。

また読んでいただけたら幸いです。

では、また!!

アスレティックトレーナー(AT)小野勇太

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です